こんにちは、長井 達也です。
今回は”鮮魚・魚介類のネットショップ開業ガイド!販売許可やECサイト開設手順”です。
魚介類は通常、卸売市場を経て市場に流通していますが、漁師さんには価格決定権が殆どないため、燃料費や人件費が高騰してもコスト転嫁が難しい場合がありますよね。
またフードロスという言葉もある中、未利用魚などは流通が難しく廃棄になる場合もあります。
そのため漁師さんや鮮魚店さんの中には「消費者や飲食店と直接販売したい」「ネットショップを開業し魚類・鮮魚を販売する方法は?」という疑問があるのではないでしょうか?
確かに、魚介類をダイレクトに消費者や飲食店等に販売出来るなら、収益性も向上する可能性がりますよね。
そうなると、全国の顧客を相手にする場合、ネットショップの開設が必要になってきます。
しかし楽天市場などでネットショップを開設すれば、月額の固定費用だけでも高額になります。
そこで今回は鮮魚店や漁業を営み、新たなマーケットを求めて魚介・海産物のネットショップを開業されたい方。
または現役漁師さんで、魚介類販売業のインターネット販売を始めてみたい方にむけて、
- 魚介・海産物のネットショップ販売現状
- 魚介・海産物のネットショップ開業に必要な許可は?
- 魚介・海産物のネットショップ運営方法
について分かりやすく解説し、魚介類の販売に最適なネットショップ開業サービスを比較紹介していきます。
魚介・海産物のネット販売に関する現状
業界動向サーチによると、2019年度における水産業界の市場規模は約2兆4,018億円となりました。
なお魚介類の価格推移については、世界的に需要が増している事に伴い資源の枯渇や漁獲高の減少による価格上昇が生まれています。
一方で日本国内では魚介類の消費量は減少に転じており、食の欧米化や魚調理を敬遠される方が増えるなど魚離れが進んでいます。
出典:「水産業界の2020年版(2019-20年)の業界レポート」(業界動向サーチ)より
このような環境の中、魚介類のネットショップを事業として成功させるには食肉との比較・近隣スーパーで販売されている魚介類との違いという2つの差別化が重要になります。
そこでまず魚の処理が面倒(捌けない・匂いがある・廃棄部分が多い)という理由で調理を敬遠される方への対策として一次加工以上の商品開発がオススメです。
もちろん活魚や鮮魚を扱ったネット通販店もありますが、安定的な商品供給が出来る事がネット上でビジネスを行う際には重要です。
なぜ一次加工以上がオススメなの?
・冷凍や加熱処理する事でアニサキス等の寄生虫対策が出来る。
・腸炎ビブリオ対策として一次加工の上冷蔵・冷蔵輸送が望ましい。
・配送コストを活魚より安く抑えることができる。
・未利用魚の活用なども検討できる。→練り物やペットフードへの転用など
魚介類のネットショップ開業に必要な資格・許可
すでに実店舗で魚介類を販売されている方が、新たにネットショップで魚介類を販売する場合には特に必要となる資格や許可はありません。
次に漁師さんなど漁業関係者の方が実店舗を持たず、新規にネットショップを開業されて魚介類を販売される場合。
食品衛生責任者の資格を取得した上で、食品衛生法に基づき魚介類販売業の許可を得る必要があります。
なお食品衛生法上に基づく各種許可を得るためには、 施設基準がそれぞれ定められており基準に沿った建物の設備・内装が必要になります。
一方で食品衛生法の改正(2021年6月1日より)により、鮮魚介類(冷凍含む)を包装容器に入った状態で仕入れて販売する場合、魚介類販売業の許可は不要となり届出のみとなりました。
※営業許可の対象業種以外の事業者は、その所在等を把握するため、届出制度を創設 されました。
最後に個人の方が新規に仕入先を開拓し、ネットショップで魚介類を販売する場合にはまずは開業届を税務署に提出する必要があります。
なお開業届の作成には簡単な質問に答えるだけで無料で作成出来る開業freeeがオススメです。
魚介・海産物のネットショップ 開業に必要な資格・許可 | 届出先 問い合わせ先 | 費用 |
---|---|---|
開業届(個人事業主) | 税務署 | 無料 |
食品衛生責任者 | ・保健所 (衛生監視事務所) ・食品衛生協会 | 12,000円 東京都の場合 10,500円 大阪市の場合 |
魚介類販売業(法令) 販売可能な商品 | ・保健所(衛生監視事務所) | 有償 |
水産製品製造業(法令) 販売可能な商品 | ・保健所 (衛生監視事務所) | 有償 |
食品衛生法の改正
2021年6月1日に食品衛生法の改正がなされ、新たに営業許可の取得が必要な業種の1つとして、水産製品製造業(旧:魚肉練り製品製造業)が新設されました。
こちらの許可を取得すれば、あじの開き、明太子などの他、魚肉練り製品製造業の対象であった、蒲鉾やちくわなどの食品、魚介類その他の水産動物又はその卵を主原料とする食品と併せて水産動物等又は水産動物等を主原料とした食品を使用したそうざい(魚の煮物や揚げ物等、焼き魚) の製造が可能となります。
なお2021年5月31日以前から営業している事業者(魚肉練り製品製造業の許可取得)は2024年5月31日までに、営業許可を取得する必要があります。(経過措置期間:3年)
出典:「食品衛生法の改正について」(厚生省)より
鮮魚・魚介類のネットショップ開業方法
鮮魚・魚介類のネットショップを開設・運営する方法として、まず2種類があります。
それはモール型とショッピングカート型です。
モール型とはAmazonや楽天市場、ヤフーショッピングなど1つのWEBサイトに複数のお店が出店しているショッピングモール型のネットショップ構築・運営サービスを言います。
一方ショッピングカート型とは、1つのお店単体のWEBサイトでネットショップが構築・運営出来るサービスを言い、BASE、makeshop、Shopifyなどがショッピングカート型サービスとして有名です。
なお食魚介・海産物のネットショップを運営する場合、「冷蔵」「チルド」「常温」のいわゆる三温度輸送が必要になります。
つまり商品ごとに「冷蔵」「チルド」「常温」の、どの温度帯に属するのか設定し、あわせてが送料設定の方法も検討が必要です。
設定例
- 例1:「冷蔵」「チルド」「常温」は同梱不可とし、すべて別口で計算
- 例2:「冷蔵」「チルド」「常温」は同梱可とし、すべて1個口で計算
- 例3:常温と冷蔵は同梱可とし、冷凍とは別口で計算
- 例4:常温と冷凍は同梱可とし、冷蔵とは別口で計算
- 例5:冷凍と冷蔵は同梱可とし、常温とは別口で計算
なお、利用されたいネットショップ開設サービスで希望通りの送料設定が出来るのかも事前に確認が必要です。
モール型とショッピングカート型の違いは?
最近では初期費用0円、月額利用料も0円というショッピングカートも誕生しています。
そこでまずはネットショップの開業手段であるモール型とショッピングカート型の主な違いについて一覧にして説明します。
モール型 | ショッピングカート型 | |
出店コスト | 高い | 安い |
利益率 | 低い | 高い |
集客力 | 高い | 低い |
デザイン性 | 低い | 高い |
顧客情報の所有者 | モール運営側 | 店舗側 |
このようにモール型とショッツピングカートでは異なる特徴があります。
これらを踏まえて、貴方が魚介・海産物をネット上で販売したい場合、モール型とショッツピングカート型、どちらで開設するのが向いてるのか判断ポイントを記載しますね。
まずは食肉魚介・海産物をネット上で販売する場合に、モール型が向いてる方の条件です。
モール型での出店が向いてる方
・知名度のある魚介・海産物を低価格で販売可能な場合
・大量生産された魚介・海産物を数多く販売したい場合
・売上金額を重視したい場合
・広告宣伝に予算を掛けられる方
続いて魚介・海産物をネット上で販売する場合に、ショッピングカート型が向いてる方の条件です。
カート型での出店が向いてる方
・知名度のない魚介・海産物を販売したい場合
・少量多品種販売されている場合
・利益率を重視したい場合
なおオムニチャネルの導入という意味では、実店舗運営者に関わらず積極的に売上高を追求するには、モールとショッピングカートの併用運用が望ましいと言えます。
ただし最初から同時に開始するのは難しいと思いますので、まずはどちらかで開業をはじめましょう。
モール型ECサイト出店時の費用比較!
魚介・海産物のネットショップ開業方法としてモール型を選択した場合、選択肢としてAmazonや楽天市場、ヤフーショッピングなどがあります。
そこで各モールの最安値プランで料金を比較します。
Amazon | 楽天市場 | ヤフーショップ | |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額費用 | 4,900円 | 19,500円 | 0円 |
販売手数料 | 8%~15% | 10%以上 | 6.5%以上 |
商品点数 | 無制限 | 5000点 | 20万点 |
出店条件 | 個人・法人 | 個人・法人 | 個人・法人 |
備考 | 販売手数料はカテゴリにより異なる | 販売手数料は利用料+決済手数料+ポイント原資他を含む。 | 販売手数料は利用料+決済手数料+ポイント原資他を含む。 |
ショッピングカート型ECサイト出店時の費用比較!
魚介・海産物のネットショップ開業方法としてショッピングカート型を選択した場合、さらに選択肢として無料カートと有料カートの2種類があります。
無料カートとしてはBASE、stores.jpなどが有名です。
また有料カートとしてmakeshop、Shopify、おちゃのこネット、カラーミーなどが有名です。
これら無料と有料での大きな違いは2点です。
注意ポイント
・無料カートは月額利用料が無料だが、販売手数料が高い。
・無料カートは原則として独自ドメインが利用出来ない。
ではこれらを踏まえて、どちらの利用が向いているのか詳しく開設します。
無料のショッピングカートが向いてる方
魚介・海産物のネットショップ開業方法として無料カートが適しているのは、月間売上高が約20万円以下、年間240万円以下の場合です。
なぜなら月間20万円以上の売上が近い将来見込めるなら、経費の損益分岐としては有料のショッピングカートのほうがお得になるからです。
また独自ドメインを選べた方が、SEO対策や将来的に何かしらの理由で別のショッピングカートに移転したい場合なども対応しやすくなります。
つまり気軽に魚介・海産物のネットショップを開業されたい場合に限り無料カートでも良いと思います。
BASE STORES カラーミー おちゃのこネット 初期費用 0円 0円 0円 0円 月額料金 0円 0円 0円 0円 販売手数料 6.6% +¥40 5% 6.6% + 30円 6.6%(税別) 商品点数 無制限 無制限 無制限 100点 独自ドメイン ◯ ✕ ◯ ✕
※カラーミーは独自ドメイン利用時、独自SSLでの常時SSL:月額1,100円発生します
2022年4月7日現在
有料のショッピングカートが向いてる方
魚介・海産物のネットショップ開業方法として有料カートが適しているのは月間売上高が約20万円以上、年間240万円以上を目指されたい方です。
また一般的にデザインのカスタマイズ性が高いのは有料カートとなります。
ですから将来的に利益がでた際、WEBデザイナーさんなどにデザインを依頼してブランディングを高めたいという場合にも有料カートはオススメです。
makeshop Shopify カラーミー おちゃのこネット 初期費用 11,000円 0円 3,300円 6,600円 月額料金 12,100円 25$ 4,950円 3,300円 販売手数料 3.19%~ 3.4% 4.0%~ 3.5%(税別) 商品点数 10,000点 無制限 無制限 5,000点 独自ドメイン ◯ ◯ ◯ ◯
※上記の初期費用は、独自ドメイン利用した場合の設定費用等が含まれています。
2022年4月7日現在
お薦め第1位 makeshop
MakeShopは上場会社GMOグループの子会社が提供するショッピングカート構築サービスです。
デザインカスタマイズ | ◎ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズなど) | 2種類まで |
特徴としては各画面のHTML・CSSが編集する事が可能なので、プロのWEBデザイナーに制作を依頼すれば自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
またデザイン性の高いテンプレートも予め用意されているので、ホームページの作成が初心者の方でも手軽にネットショップが作成可能です。
料金体系も契約期間に応じて最大30%割引となります。
お薦め第2位 おちゃのこネット
おちゃのこネットは、高機能かつ低価格なショッピングカートとして有名です。
デザインカスタマイズ | ○ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズ・男女など) | 3種類まで |
makeshopと同様にCSSが編集可能なので、比較的自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
またデザイン性の高いテンプレートも予め用意されているので、ホームページの作成が初心者の方でも手軽にネットショップが作成可能です。
お薦め第3位 カラーミー
カラーミーショップはmakeshopと同じく上場会社GMOグループの子会社が提供するショッピングカート構築サービスです。
デザインカスタマイズ | ◎ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズなど) | 2種類まで |
デザインテンプレートのHTMLやCSSが編集可能なので、自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
ただしオプションの料金メニューが多く分かりづらい面もあります。
お薦め第4位 Shopify
Shopify はカナダ発祥、世界175か国、1,700,00店舗を有する世界最大のショッピングカート構築サービスです。
デザインカスタマイズ | ◎ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズなど) | 3種類まで |
ShopifyはHTMLやCSSが編集可能なので、自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
なお1つの商品に対して歩留等級や肉質等級など3種類まで組み合わせが可能で、最大100パターンまでのバリエーション登録が可能です。
特徴としては、ShopifyがWordPressのように拡張性に富んだサービスで、例えば多言語展開が可能なので越境ECに挑戦したい方にはオススメのサービスと言えます。
ただし日本法人はありますが、サービス開発がカナダということもありどこまでローカライズ出来ているかというと疑問点もあります。
鮮魚・魚介類の梱包方法について
鮮魚・魚介類・海産物のネットショップ開設準備が整ったら、次は梱包材などの手配です。
発泡スチロールやダンボールなどの梱包材(ダンボール・クッション材・テープなど)を準備しましょう。
なお取り扱う商材によってはネットショップの利益を圧迫するものとなります。
また、梱包材の大きさや梱包方法によって運送会社の送料も大きく変動する場合があります。
商材にマッチした梱包材を選ばないと不要なコストが発生します。
鮮魚・魚介類の発送について
ネットショップ開設前に準備が必要なのが、運送会社との契約です。
個人宅への配送業者として基本的にヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社のいずれかで行うのが一般的です。
なおヤマト運輸を利用されるショップが多い印象です。
事前に最寄りの営業所に電話して、送り状を入手しておきましょう。
送り状作成には印刷出力する方法と手書きの2種類あり、入手先・方法は下記の通りとなります。
プリンタを用意して、印刷出力できるように準備することがオススメです。
まとめ
以上、”鮮魚・魚介類のネットショップ開業ガイド!販売許可やECサイト開設手順”はいかがでしたか?
魚介類の販売については、地域の特色をアピールしつつ、対象となる世帯をイメージして(いわゆるペルソナ設定)、量や味付け、家庭での調理時間など細かく考えて商品開発してみましょう。
ポイント
- 魚介類のネット販売では食中毒の予防から、鮮魚よりも一次加工がオススメ。
- 魚介類の一次加工品を販売する際、魚介類販売業と水産製品製造業の営業許可が必要。
- 一次加工品(包装済み)を仕入れて販売する場合、届出のみで販売可能。