こんにちは、長井 達也です。
今回は”農家さんのネットショップ開業ガイド!野菜・果物の販売許可について”です。
最近は個人の農家さんなどが、自分で育てた野菜をネット販売されるケースも増えていますよね。
個人で野菜をネット販売する理由
- 農協経由で販売する限り、農家さんには価格決定権が殆どない点が挙げられます。
- 栽培技術を磨き品質の良い農作物を作ってもコストを転嫁出来ない。
- フードロスなんて言葉もあるのに、農協経由だと規格外野菜を販売できない。
しかし一方で農協や卸売市場は、農作物を集約し一般消費者に配送する物流拠点と販売代行業として重要な役割りを果たしてきました。
そのため個人農家の方がネットで野菜や果物を販売していくには、第一次産業のスキルだけでなく商売人としてのスキルが必要になります。
そこで今回はより良い農作物を作り、適正価格で消費者へダイレクトに販売されたい農家さんや八百屋さんを営む方に向けて、
- 野菜・果物販売のネットショップ販売現状
- 野菜・果物販売のネットショップ開業・運営方法
について分かりやすく解説していきたいと思います。
野菜・果物のネット販売に関する現状
業界動向サーチによると2019年度における農業総産出額は、8兆8,938億円でした。
前年比1.8%減となり、緩やかな減少傾向にあります。
農業用地の集約化などで生産効率が上っている一方で、農業従事者の高齢化と担い手の減少が要因の1つとなっています。
一方、今後のトレンドとしてやってくるのがAIによる屋内農業(植物工場)です。
ソフトバンクも出資しているスタートアップ企業プレンティーは、都市又はその近郊で垂直農法と水耕栽培(養液栽培)の施設を備えた工場で食物を育てるビジネスモデルです。
まだ生産コストが高いのがネックですが運送コストを抑え、消費者にダイレクトに販売する事業モデルが確立すると、露地栽培等には脅威となる日がくるはずです。
出典:「農業業界の2020年版(2019-20年)の業界レポート」(業界動向サーチ)より
次に農林水産省が提供しているデータ(上記グラフ)によれば、国産青果に関しては卸売市場経由率が9割近い(H25年度)状況です。
一方で輸入青果も含めた青果全般の卸売市場経由率は60%となっています。
つまり輸入青果物の多くが卸売市場を通さず、ダイレクトに取引されている事が分かります。
また輸入青果物には、青果物だけでなく一次加工野菜(カット野菜や、冷凍野菜)、加工品の野菜(キムチなどの漬物類など)などが含まれます。
以前より農業の6次産業化について必要性が言われてきましたが、海外の輸入野菜は見事に6次産業化されて日本国内に流通しています。
では青果物(野菜・果物)を生産する農家さんがネットショップに活路を求めた場合、どのような戦略で挑めば良いのか。
その答えを得るため、ネットショップを開業されてる2社の事例を紹介していきたいと思います。
オイシックス・ラ・大地株式会社のネットショップ現状
オイシックス・ラ・大地株式会社は、2018年10月に「らでぃっしゅぼーや株式会社」を経営統合し、自然派食品宅配業界の最大手の上場企業です。(連結売上 710億4,090万円(2020年3月期))
提供サービス名
なおオイシックス・ラ・大地株式会社が提供する2つのブランドの違いをまとめてみました。
大地を守る会 送料無料の「お試し野菜セット」が1,980円から! | らでぃっしゅぼーや らでぃっしゅぼーやのおためしセット | |
サービス価格 | 毎週4,800円~5,800円 | 個別 |
サービス内容 | 極力農薬を使わない契約農家からの旬の野菜が毎週届く | 有機野菜・低農薬野菜、 無添加食品の宅配サービス |
ターゲット層 | 30代~60代の主婦 ※コア層は40代 | 30代~60代の主婦 ※コア層は40代 |
想定ニーズ | ・安心安全な食材を手に入れたい ・旦那さんの健康を気づかっている ・野菜の味にこだわっている ・料理のスキルがあり、珍しい野菜を求めている ・余計な味付けはせずにヘルシーに食卓を彩りたい | ・家族の健康が気になる ・野菜不足 ・献立もワンパターンの方 ・食品添加物が気になる ・子供への食育に興味がある。 ・農薬規制が厳しいものを選びたい |
2つのサービスに共通するのは、安心安全である事、そして商品情報の積極的な提供にあります。
また価格に関しては2つのサービスとも決して安くは有りませんが、最初の敷居を低くするために初回購入時には大幅な割引があるのが特徴です。
株式会社GRAのネットショップ現状
株式会社GRAは、宮城県亘理郡にある農業生産法人で、東日本大震災で被災した町の復興事業として、「ミガキイチゴ」というイチゴの新ブランドを誕生・生産しています。
このミガキイチゴの特徴は、「食べる宝石」をコンセプトとした、複数品種のイチゴの統一ブランドです。
ミガキイチゴは、職人技とITを融合した最先端施設園芸により、技術、製法、品質基準による果実の違いをブランド化し、2013年度にはグッドデザイン賞を受賞しました。
またミガキイチゴはブランディングに成功し、一粒1000円の値が付くなどの実績があります。
なお株式会社GRAの代表取締役である岩佐大輝さんは、24歳でITベンチャーを起業し東日本大震災後に先端施設園芸を軸にした地域活性化を目的とするGRAを創設、農業未経験ながら僅か1年で独立しています。
野菜・果物のネットショップ開業に必要な資格・許可
青果物(野菜・果物)のネットショップを開設する場合、特に必要となる資格や販売許可はありません。
注意ポイント
規格外の果物をジャムにして販売したい場合や、ピクルスを販売したいなど、青果物を何かしら加工販売する場合には食品衛生責任者の資格と、食品衛生法に基づき営業許可が必要です。
ただし新規に個人事業主として開業し、青果物(野菜・果物)のネットショップを運営したい場合には税務署に開業届の提出が必要です。
開業届とは、個人で新たにお金を生む仕事を始めたら開業準備から1カ月以内に税務署へ提出が必要な書類になります。
青果物(野菜・果物)のネットショップ 開業に必要な資格・許可 | 届出先 | 費用 |
---|---|---|
開業届(個人事業主) | 税務署 | 無料 |
なお個人事業主として事業を開始する際に提出が必要な開業届は、少し難しく分かりづらい書面になっています。
そこでお薦めするのが、簡単な質問に答えるだけで開業届が無料で作成出来る開業freeeです。
開業freeeなら確定申告でメリットが多い青色申告に必要な『青色申告承認申請書』も同時に作成する事が出来ます。
後はパソコンで開業届を印刷して税務署に郵送(2部郵送し、1部控え用で返却してもらいます)するだけでOKです。
※『開業届の提出を忘れていた方!』遅れてもペナルティーはないので、早めに提出を!
野菜・果物のショップ開業方法
青果物(野菜・果物)のネットショップを開設・運営する方法として、まず2種類があります。
それはモール型とショッピングカート型です。
モール型とはAmazonや楽天市場、ヤフーショッピングなど1つのWEBサイトに複数のお店が出店しているショッピングモール型のネットショップ構築・運営サービスを言います。
一方ショッピングカート型とは、1つのお店単体のWEBサイトでネットショップが構築・運営出来るサービスを言い、base、makeshop、Shopifyなどがショッピングカート型サービスとして有名です。
モール型とショッピングカート型の違いは?
最近では初期費用0円、月額利用料も0円というショッピングカートも誕生しています。
そこでまずはネットショップの開業手段であるモール型とショッピングカート型の主な違いについて一覧にして説明します。
モール型 | ショッピングカート型 | |
出店コスト | 高い | 安い |
利益率 | 低い | 高い |
集客力 | 高い | 低い |
デザイン性 | 低い | 高い |
顧客情報の所有者 | モール運営側 | 店舗側 |
このようにモール型とショッツピングカートでは異なる特徴があります。
これらを踏まえて、貴方が青果物(野菜・果物)をネット上で販売したい場合、モール型とショッツピングカート型、どちらで開設するのが向いてるのか判断ポイントを記載しますね。
まずは青果物(野菜・果物)をネット上で販売する場合に、モール型が向いてる方の条件です。
モール型での出店が向いてる方
・知名度のある青果物(野菜・果物)を低価格で販売可能な場合
・大量生産された青果物(野菜・果物)を数多く販売したい場合
・売上金額を重視したい場合
・広告宣伝に予算を掛けられる方
続いて青果物(野菜・果物)をネット上で販売する場合に、ショッピングカート型が向いてる方の条件です。
カート型での出店が向いてる方
・知名度のない青果物(野菜・果物)を販売したい場合
・少量多品種生産をされている場合
・利益率を重視したい場合
なおオムニチャネルの導入という意味では、実店舗運営者に関わらず積極的に売上高を追求するには、モールとショッピングカートの併用運用が望ましいと言えます。
ただしいきなり同時に開始するのは難しいと思いますので、まずはどちらかで開業をはじめましょう。
モール型ECサイト出店時の費用比較!
青果物(野菜・果物)のネットショップ開業方法としてモール型を選択した場合、選択肢としてAmazonや楽天市場、ヤフーショッピングなどがあります。
そこで各モールの最安値プランで料金を比較します。
Amazon | 楽天市場 | ヤフーショップ | |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額費用 | 4,900円 | 19,500円 | 0円 |
販売手数料 | 8%~15% | 10%以上 | 6.5%以上 |
商品点数 | 無制限 | 5000点 | 20万点 |
出店条件 | 個人・法人 | 個人・法人 | 個人・法人 |
備考 | 販売手数料はカテゴリにより異なる | 販売手数料は利用料+決済手数料+ポイント原資他を含む。 | 販売手数料は利用料+決済手数料+ポイント原資他を含む。 |
ショッピングカート型ECサイト出店時の費用比較!
青果物(野菜・果物)のネットショップ開業方法としてショッピングカート型を選択した場合、さらに選択肢として無料カートと有料カートの2種類があります。
無料カートとしてはbase、stores.jpなどが有名です。
また有料カートとしてmakeshop、Shopify、おちゃのこネット、カラーミーなどが有名です。
これら無料と有料での大きな違いは2点です。
注意ポイント
・無料カートは月額利用料が無料だが、販売手数料が高い。
・無料カートは原則として独自ドメインが利用出来ない。
ではこれらを踏まえて、どちらの利用が向いているのか詳しく開設します。
無料のショッピングカートが向いてる方
青果物(野菜・果物)のネットショップ開業方法として無料カートが適しているのは、月間売上高が約20万円以下、年間240万円以下の場合です。
なぜなら月間20万円以上の売上が近い将来見込めるなら、経費の損益分岐としては有料のショッピングカートのほうがお得になるからです。
また独自ドメインを選べた方が、SEO対策や将来的に何かしらの理由で別のショッピングカートに移転したい場合なども対応しやすくなります。
つまり気軽に青果物(野菜・果物)のネットショップを開業されたい場合に限り無料カートでも良いと思います。
BASE STORES カラーミー おちゃのこネット 初期費用 0円 0円 0円 0円 月額料金 0円 0円 0円 0円 販売手数料 6.6% +¥40 5% 6.6% + 30円 6.6%(税別) 商品点数 無制限 無制限 無制限 100点 独自ドメイン ◯ ✕ ◯ ✕
※カラーミーは独自ドメイン利用時、独自SSLでの常時SSL:月額1,100円発生します
2024年1月18日現在
有料のショッピングカートが向いてる方
青果物(野菜・果物)のネットショップ開業方法として有料カートが適しているのは月間売上高が約20万円以上、年間240万円以上を目指されたい方です。
また一般的にデザインのカスタマイズ性が高いのは有料カートとなります。
ですから将来的に利益がでた際、WEBデザイナーさんなどにデザインを依頼してブランディングを高めたいという場合にも有料カートはオススメです。
makeshop Shopify カラーミー おちゃのこネット 初期費用 11,000円 0円 3,300円 6,600円 月額料金 12,100円 25$ 4,950円 3,300円 販売手数料 3.19%~ 3.4% 4.0%~ 3.5%(税別) 商品点数 10,000点 無制限 無制限 5,000点 独自ドメイン ◯ ◯ ◯ ◯
※上記の初期費用は、独自ドメイン利用した場合の設定費用等が含まれています。
2022年4月7日現在
お薦め第1位 makeshop
MakeShopは上場会社GMOグループの子会社が提供するショッピングカート構築サービスです。
デザインカスタマイズ | ◎ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズなど) | 2種類まで |
特徴としては各画面のHTML・CSSが編集する事が可能なので、プロのWEBデザイナーに制作を依頼すれば自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
またデザイン性の高いテンプレートも予め用意されているので、ホームページの作成が初心者の方でも手軽にネットショップが作成可能です。
料金体系も契約期間に応じて最大30%割引となります。
お薦め第2位 おちゃのこネット
おちゃのこネットは、高機能かつ低価格なショッピングカートとして有名です。
デザインカスタマイズ | ○ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズ・男女など) | 3種類まで |
makeshopと同様にCSSが編集可能なので、比較的自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
またデザイン性の高いテンプレートも予め用意されているので、ホームページの作成が初心者の方でも手軽にネットショップが作成可能です。
特徴としてはバリエーション登録機能が豊富です。
例えばでカラーやサイズに他に追加でバリエーションが必要な場合、おちゃのこネット一択となります。
商品点数が5000点以下でよければオススメしたいサービスです。
ちなみに今回紹介したトントンハウスさんはおちゃのこネットを利用されています。
お薦め第3位 カラーミー
カラーミーショップはmakeshopと同じく上場会社GMOグループの子会社が提供するショッピングカート構築サービスです。
デザインカスタマイズ | ◎ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズなど) | 2種類まで |
デザインテンプレートのHTMLやCSSが編集可能なので、自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
ただしオプションの料金メニューが多く分かりづらい面もあります。
お薦め第4位 Shopify
Shopify はカナダ発祥、世界175か国、1,700,00店舗を有する世界最大のショッピングカート構築サービスです。
デザインカスタマイズ | ◎ |
Instagram連携 | ○ |
バリエーション登録 (カラーやサイズなど) | 3種類まで |
ShopifyはHTMLやCSSが編集可能なので、自由度の高いネットショップサイトが構築できます。
なおカラーやサイズなど3種類の組み合わせまで可能で、最大100パターンまでのバリエーション登録が可能です。
ココがポイント
例)サイズ3種類【S・M・L】 ✕ カラー3種類【赤・青・黄】 ✕ 性別2種類【男・女】だと18パターンのバリエーションという事ですね。
特徴としては、ShopifyがWordPressのように拡張性に富んだサービスで、例えば多言語展開が可能なので越境ECに挑戦したい方にはオススメのサービスと言えます。
ただし日本法人はありますが、サービス開発がカナダということもありどこまでローカライズ出来ているかというと疑問点もあります。
商品の梱包方法について
青果物(野菜・果物)のネットショップ開設準備が整ったら、次は梱包材などの手配です。
ダンボールなどの梱包材(ダンボール・クッション材・テープなど)は、取り扱う商材によってはネットショップの利益を圧迫するものとなります。
また、ダンボールの大きさや梱包方法によって運送会社の送料も大きく変動する場合がありますので、商材にマッチした梱包材を選ばないと不要なコストが発生します。
商品の発送について
ネットショップ開設前に準備が必要なのが、運送会社との契約です。
個人宅への配送業者として基本的にヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社のいずれかで行うのが一般的ですが、とくにヤマト運輸を利用されるショップが多い印象です。
事前に最寄りの営業所に電話して、送り状を入手しておきましょう。
なお送り状作成には印刷出力する方法と手書きの2種類あり、入手先・方法は下記の通りとなります。
プリンタを用意して、印刷出力できるように準備することがオススメです。
まとめ
以上、農家さんのネットショップ開業ガイド!野菜・果物の販売許可についてはいかがでしたか?
生産者さんが拘って作られた青果物は、ミガキイチゴさんのようにダイレクトに消費者に販売するほうが理にかなっていると思います。
それには農作物のブランディング(デザインや売り方)も重要な要素となります。
もちろん、全部自分たちで解決する必要はありません。
例えばフリーのデザイナーさんに仕事を発注する事ができる、クラウドワークス を利用するのも解決策の1つです。
ロゴマークのデザインなら7000円~10,000円程度の予算でも、コンペ形式で複数のデザインの中から希望のロゴを選択する事が可能です。
なおブランディングも含めた『ファーム・アイデンティティ』の考え方については、agrijournalさんの記事がオススメです。
ポイント
- 付加価値の高い農作物ほど、ネット販売に適している。
- 6次産業を意識した商品開発も検討が必要。
- 規格外野菜も立派な商品です。